[流体枷仔]

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【手習】の記事一覧
Posted on 18:15:43 «Edit»
/について―――葛西佑也『みをつくし』「きみが生まれるずっと前から、ぼくはその国境線を知っていた」から

あゝもう行かなくちゃ 秋が来るから (hyde「夏の憂鬱」)




さて葛西さんです。葛西佑也さんです。

葛西さんと言ったらスラッシュ(「/」)、スラッシュと言ったら葛西さん、というのは言い過ぎだとも思いますが。

たとえば、こういう使い方です。

美しいものたちでみちている(気がする/した、
[・・・]
いたい?いたい?/あのひとは無痛病だった/かもしれない。
葛西佑也「きみが生まれるずっと前から、ぼくはその国境線を知っていた」、特に断りのない注釈は以下すべて本作からとする



「美しいものたちでみちている(気がする/した、」という表現からはたとえば、「美しいものたちでみちている」、「美しいものたちでみちている気がする」、「美しいものたちでみちている気がした」という3つのイメージが並列されるのではなく、1つにまとめられています。異なるイメージがひとつのフレーズへと圧縮されているようです。

「いたい?いたい?/あのひとは無痛病だった/かもしれない。」では、前半の「いたい?いたい?」という過剰な反復を「/」で切断し、対照的である「無痛病」という言葉を導いています。後半の「無痛病だった」と「無痛病だったかもしれない」は「/」で、さきほどの<ワンフレーズへの圧縮>とおなじです。

もちろん、とじられないパーレル「(」とスラッシュ「/」には、それぞれ別のイメージが読み取れると思うので、「みちている」と「みちている気がする」の圧縮と、「気がする」と「気がした」や「無痛病だった」と「無痛病だったかもしれない」の圧縮は、異なるものだと思うので、上述はちょっと雑でしたね。

余談ですが、わたしの個人的なパーレルとスラッシュの使い分けですが、パーレルがその直前のワードやフレーズに「埋没」されている何かを剝きださせるものであるのに対して、スラッシュはその直前のワードやフレーズではないものも「書かれ得たかもしれない選択肢」としてあったことを示しているようにおもひます。

「美しいものたちでみちている(気がする/した」を、わたしのパーレルやスラッシュの読み方で読んだとき、「美しいものたちでみちている」という言い切りには、こうした言い切りは主観に過ぎない(「みちている気がする」)という語り手の気持ちが埋没されていることをまずは読み取ります。そして、主観に過ぎないことが明かされるも、回想的に振り返ってみるとそれは現在と違う捉え方(「みちていた気がした」)だと自覚している語り手が更に読み取れます。

仮に、わたしのこうした読み方のとほりに読まれることを意図して「美しいものたちでみちている(気がする/した」というフレーズが書かれたのだとして、ではなぜ、このような書き方でなければならなかったのか、あるいはこのような書き方だからこそ発揮しうる効果とはなにか、といったことが気になります。

閑話休題。


では次に、文学極道で葛西さんが投稿された作品についたレスやそれへの葛西さんのレスレスのうち、スラッシュや記号の使用について触れたものをピックアップして、ほかの人がどんな風にスラッシュを読んでいるのか確認してみましょう。

言葉を恣意的に分解してみせることで、コミュニケーションがうまく機能していない様を表現している件。
K,y「きみは国境線という概念をもたずに、それをこえていった」へのミドリのコメント(http://bungoku.jp/ebbs/20080818_005_2970p)



これは先に述べた切断についてと似てますね。ただ、このレスのついた作品では表記をローマ字にすることで、切断よりばらばらに「分解」されています。

「/」の使用。散文詩だからかもしれませんが、今回は僕はあまり効果的に機能しているとは思えなかったですね。流れが躓いているような気がするし、読み手の視点というか、拠り所がブレる感じになると思いますが、少なくとも今回はその揺れはあまり心地良いものとは僕は感じられなかったです。
葛西佑也「コンプレックス」へのToatのコメント(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=57;uniqid=20060923_724_1566p#20060923_724_1566p)



流れの躓き、読み手の視点やよりどころのブレ、揺れ。こうして指摘されている点は、わたしが圧縮と読んだポイントと似ていました。つまり、フレーズから受け取るイメージがひとつにならないまま提示されている。

スラッシュごとに途切れる語り、そのつまずきのリズムが、うまく
読み手を作品の世界に引き込んでいると思います。
葛西佑也「ホスピタル」への軽谷佑子のコメント(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=82;uniqid=20070512_301_2061p#20070512_301_2061p)



途切れる語り、つまずきのリズム。こうした読みづらさ・読みにくさというものが、語り手の語ろうとしている物事の語りにくさとあいまったとき、読み手は語り手の思考を追体験し得るかもしれないですね。どうですか。

書けることと書けないことが混沌と混ざってて
虚虚実実というか。スラッシュというのは
言葉の境目ではなく 表と裏という感じですけど。
[…]
が スラッシュをいれると 違ってみえるんですね。
完成した絵に線を斜めに入れて 宇宙というか外界を
感じさせるものをみたことがありますけど。
おだやかな水面下の底なしの泥沼かな。
葛西佑也「ホスピタル」への砂木のコメント(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=82;uniqid=20070512_301_2061p#20070512_301_2061p)



このコメントは先ほどの余談と近いなあ、と勝手におもっています。つまり、スラッシュという記号を用いて文末を並列させることで、語り手の語れなさが浮かび上がる、と言いましょうか。同じ文の文末だけ変えたものを並べるのではなくて、スラッシュをつかってそれらをムリヤリならべることでいやがおうにも目につく「/」自体が、語り手の語りたいものだったのではないだろうか、などと思ってみたりします。

スラッシュの使い方での、二重的優柔不断な部分
葛西佑也「ホスピタル」への平川綾真智のコメント(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=82;uniqid=20070512_301_2061p#20070512_301_2061p)



優柔不断。まさに、選択肢から何かを選びえない状況なわけです。選べなさそれ自体を見せつけてきますよね。

気になるところは、葛西さんのオリジナルかもしれませんが、
>みちている(気がする/した
こういう表現、色々な角度から見えて、多様なように映りますが、
言葉の責任回避のようで、
像が、ぐらぐら揺れている様で、芯がないように見えます。
葛西佑也「きみが生まれるずっと前から、ぼくはその国境線を知っていた」への前田ふむふむのコメント(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=90;uniqid=20070629_558_2162p#20070629_558_2162p)



言葉の責任回避、像が揺れて芯がない。これらも本作を読めばわかるように、確定できない・語れないことというテーマ――生まれてくるまでは自分ではないなにものか「かもしれない」!――で、そうしたものを表現する手段としてスラッシュを用いています。語り手の語りの「ぐらぐら」がテーマとばっちしあってますね。

言うなれば、スラッシュもアスタリスクも文法です。
文法って流動的なもので、
広義にはきっと個人個人、自分の文法を持っている。
意識的であれ、無意識的であれ。
ですから、スラッシュもぼくには文法的に用いているわけです。
具体的には、テンスのずれであったり
テンスを確定しきれない場合。
これはアスペクトに関してもいえるかも。
ただいつもそうだとは限らないし、変わるかもしれないですし。
そこはやっぱり分からないのです。自分でも。
葛西佑也「てんの桜/地の子宮」への久米一晃のコメント「葛西さんにとってスラッシュの使用ってなんですかね?」に対する葛西佑也のレスレス(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=217;uniqid=20100406_925_4298p#20100406_925_4298p)



最後は葛西自身のスラッシュに関するコメント。テンスやアスペクトの定まらなさのほかにも、ムードのブレをあらわす使い方もあるような気がします。ほかに、フレーズを句点で停止させつつ接続詞で駆動させることもありますね。


では、いまさらながら、スラッシュ「/」ってそもそもどんな風に使うものなんでしょうかね。見てみましょう。


詳しくは、みんな大好きWikipediaでスラッシュのページを見てほしいのですが。

1)日付:09/01(9月1日)
2)数学:1/3(3分の1)、〇km/h(時速〇km)
3)接続:A/B(A or B または A and B)、東京/羽田(東京都の羽田空港)
4)改行:雨ニモマケズ/風ニモマケズ(本来は2行で書かれている)

とりあえず、わたしが気になったのはこのあたりです。

これらのうち、1と3が葛西さんの作品(と言おうか、多くの「文章表現」)に用いられている「/」の理解の仕方として、多くの読み手が援用されているのではないかなぁ、と。

ことばや文章が「ばらばら」になっている、切断されているような印象と捉えて読み進めるときは1、確定できない「ぐらぐら」な感じ、異なるテンスやアスペクトがひとつのフレーズに圧縮されていると捉えられたときは3。

つまり、「いたい?いたい?/あのひとは無痛病だった」のスラッシュは1、「無痛病だった/かもしれない。」は3のスラッシュの用法を、それぞれ援用しているのではないでしょうか。わたしはしてる気がする。

でもこういうのもある。

じめじめ じめじめ じめじめ/ん



これは直前の水分のことを指す「じめじめ」が、「じめ」の音から導き出される「地面」を召喚するために「じめ/ん」という表記をしています。

こうした言葉遊び・音遊び的なものも、「地面」のなかに水分(「じめじめ」)が存在することを示し、続くイメージが地面から生まれる生き物だったり、捨て犬が渇きを癒す水たまりだったりしていて、音・表記・描かれているもののイメージがゆるやかに連関していて読んでいて心地よいです。スラッシュ使用例1~4のどれにもあてはまらないけれど。

ほかに、

もういちど、うまれてくる日。/は、小犬かもしれない、異性かもしれない、外国人かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、かもしれない、
/? 、小犬の死骸に、母乳をあたえる、昔母親だった女

/に
「セイヘロートゥー
いつかの親友
  /セイ、



冒頭に「スラッシュ」って……。しかも、疑問符だけとか助詞だけとか……。

散文の聯にある「うまれてくる日。/は、小犬かもしれない」は、体言止めで「もういちど、うまれてくる日。」を強調することと、「うまれてくる日は、小犬かもしれない、」に続く確定できない「かもしれない」の連打につながる。停止と駆動を圧縮し、立ち止まりながら加速していくような読みを促しています。

末尾の「かもしれない、」から、次に改行して1行のみ、そして聯をまたいで最後の改行詩に続きます。

この「かもしれない、」から改行して1行だけの冒頭と、聯をまたいだ最後の改行詩の1行目の冒頭とが、どちらも「/」から始まっています。

はたして、このスラッシュは必要なのでしょうか。

スラッシュだけでなく、ひとつのフレーズを改行や聯でまたがせることの効果なんかも考えなきゃいけないので、ちょいと手にあまるというか、だいぶ手に余るんだけど。

とりあえず、改行や段落・聯を改めた場合、それまでの流れや塊をひとまとめにして対象化し、接続語や指示語で扱えることがありましたよね。それを援用してみたいと思います。

そうすると、「/? 、」というのは、その直前まで10回も唱えられた「かもしれない、」の連打に疑問符を乗っけている、というように言えるかなと思います。この疑問が、語り手の語りかけている他者なのか自問自答なのかで読みは変わると思います。

ちなみにわたしは、疑問符の後に読点があることから、小犬の嘔吐から始まったうまれ直しという妄想が暴走していくも唐突にぷつっと途切れて(この暴走が途切れることを改行で表しているものとして)、目前の現実を認識する流れにつなげるためのブリッジとして自問自答しているのかな、と読みました。

もうひとつの「/に」は、聯をまたいでいるとはいえ直前の「昔母親だった女」という体言止めで終わった行を、もういちど駆動させてエンディングにつなげているように見えました。さっきの「うまれてくる日。/は、」と同じようなつなげ方ですが、聯をまたいでいるぶんだけ、こっちのほうがより強い停止ですね。

バスケのドリブルでディフェンスを抜くときの技にストップ&ゴーってありますよね、ああいう動きを読み手の読むスピードのなかに捻じ込んできているようにおもいます。


ところで、音楽みたいに文章を書くことは出来ないだろうか。

イメージが重層的であるとか、バフチンの「ポリフォニー」であるとか、そういうことではなく。鑑賞の感覚器官に同時に複数の情報を与えるにはどうすればよいだろうか、という疑問をもっていました。今も割とある。

たとえば、今この文章を読んでいる方はこれらの文字列を左から右に目を動かしているとおもうのですが、目からひとつずつしか情報は得られないとおもうのです。音楽はその点、複数の楽器が混じったものとして作品ができあがりますよね。料理とかもそうですね。

ni_kaの用いている絵文字を多用する方法だったり、タイポグラフィや文字にカラーリングしたりフォントを変えたり。吉増剛造みたいな割注やルビを使う方法もありますね。

わたしがスラッシュで書かれているものを圧縮という言葉で呼んでいるのは、こんな疑問を解決する方法として自分がスラッシュを使ってきたっていうのもあるような気がします。

そいや、スラッシュについて書くのってこれが初めてじゃありませんでしたね。→望月遊馬『海の大公園』[しろい鸚鵡]小考


おわりにかえて、境界線=スペクトラム、アリーヴェデルチ

アンケートとかで「a/b」に丸を付けろって言われたら「/」に丸をつけるようになったのはいつ頃か忘れましたが、まあ、なんというか、勝手に区分すんなようるせえなこのやろおみたいな気持ちから、こういうことをし始めたような気がします。

何かと何かが並べて置かれているだけでは気づきもしない境界線、あるいは本来ないと思っていたところに引かれる境界線。

国境線が引かれることでその線のこっち側とあっち側が意識される。妊娠線が出産をしたことのある者とない者とをわける。はたして、ほんとうに?

並べられた選択肢、あっちでもない。こっちでもない。選べない。そのどちらでもある、どちらでもない。

『ジョジョの奇妙な冒険』のジッパーをモノや敵にくっつけることで相手をばらばらにする能力をもつスティッキ・フィンガーズは、文字通り境界線を相手に押し付けて、対象をムリヤリ分けてしまうスタンドです。境界線というのは、こんな風に、線の向こう側とこちら側という風に、ある意味暴力的に仕分けてしまう。

一方でこんな考察があります。スティッキィ・フィンガーズをスタンド能力とするブローノ・ブチャラティにとってジッパーは、ばらばらになった家族をつなぎとめたいとか、話をしてくれない父の心を開きたいとか、そういう心の奥にある思いが能力として発現したんじゃないか、というもの。

そこに境界線が、スラッシュがあることで、線のあっちとこっちがつながったら、線のあっちとこっちに分けただけでは見えなかったものが見えるようになったら。暴力的に仕分ける装置としてでなく、あっち・こっちのどちらにも確定できないということそれ自体も飲み込んでしまうようなスペクトラムのような「/」。

この視点から最後に読み直してみてください。

/に
「セイヘロートゥー
いつかの親友
  /セイ、



いつかの/に、セイヘロートゥー!!


case

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Posted on 20:21:36 «Edit»
2015
02/26
Thu
Category:【手習】

白紙にむかって歌うんだ(ゴル) 

白紙にむかって歌うんだ

ボールペン、はなびら、
冷えていく鉄、
ぼくら(あたしたち)は、
手のひらを、
ノートのかわりにしていた、

運動、ふるえる血、湯気、
あしたにはきれいになってるはず、
そう言って、モップの汚れを、
床になすりつけている、

生め
夢、叶う
汲め

わたしたち(おれら)の手のひらは、とても真っ白で
汚れてなんか、いっさい無くて
棘の生えた地面、浮雲、煤煙、
のどをからして歌ったんだ、
くすんだ毛布をみんなでわけあって、雪のなか、

リンゴ、パン、ケーキがなければ何を食べるの、
知恵の実を分け合って、
お金なんか持っていない、あいつらばかりがいい目みて、
棍棒、足音、土煙、
手のひらにばってん、盗人の証、

こ 2015/02/24 (Tue) 19:41:35
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Posted on 20:20:39 «Edit»
2015
02/26
Thu
Category:【手習】

Co., Ltd.(ゴル) 

Co., Ltd.

--クワイエット・ルーム、プリーズ
女は手拍子しながら奥へ入っていった、待合室にはあたし一人だ
待合室には絵本があり、どこぞのカンパニーがマフィンを焼いている
ヒカリを灯すのだは、社訓であった
--ワン・クワイエット・ルーム、キャラメル・マキアート、25
ここでは沈黙をしてはならない
あたしたちは思考を制限されている
睡眠をするための
25番の札をもった男がブルーベリー・マフィンを受け取って奥へ入っていった
待合室にはあたし一人だ
あたしは絵本を戻され、カーテンが少ししわになっている、窓の外から日光がさしこむ
日の光が待合室を照らす、カウンターには蟹型アンドロイドが器用にマフィンを焼いている
蟹じゃあ給料は2本でいいからね
カンパニーの社長が以前雑誌で語っていたことを思い出す
奥から電気スタンドが運ばれあたしの隣に置かれた
待合室にはこれで24つのスタンドがあることになる
もうすぐ25個目が運ばれてくるだろう
ヒカリを灯すのだ
ヒカリを灯すのだ
ヒカリを
あたしが消えてヒカリが灯り、待合室には手拍子してた女だったやつが一人

こ 2015/02/21 (Sat) 11:39:57
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Posted on 20:12:42 «Edit»
2015
02/26
Thu
Category:【手習】

[色に溺れる] 

色に溺れる



土〉
血〉
葉〉
どれも同じ
(どれもだいじ)
だいちにこぼす赤い
その茶色い境界面に 父〉
木漏れ日を
てのひらですくうように
見上げてみる緑色の裏側裏
(まあなんてくうはく、まあ、) 母〉
どれも区別つかず
体内にはびこっているのは
水脈だと
血脈だと
葉脈だと
おしえていただいた記憶があります。
「脈動」
いとのようなくうかんに泥
ふれたものが泥になるのか
泥しか触れることができないのか
泥の中を生かされているのです
「「よだきいよお
新芽だ、と
だまくらかされた過去の幻影を
透けて見える葉裏がわらいます
(まあなんてあかい、まあ、)
左胸を還してください
左胸に還してください
(まあなんてあかい、まあ、)
記号状の砂
どうせまた濡れるのですけれどね。


うわまぶたは落下傘
ビニルがさのせんたんが恐怖(失明)
(まあなんてあかい、まあ、)
おそらく
「土と大して変りません」
「葉と大して変りません」
雨がふればどちらも  
ぐちょぐちょ(腐葉土
えいようがあってよいですね
かたい枕は墓石です
(まあなんてくうはく、まあ、)
夜がこんなに白かったなんて知らなかった
つちちちちはははは、みられない
はびこられる一方の地球上で
劇中劇が行なわれている
なんてにちじょう、なんてひにちじょう
花にはすべて「犬」とルビ振られ
あらゆる蕾が
色相環を要求する。
(まあなんてことでしょう、まあ、)
「わかりません」
無知覚を指摘され
どこまでも泳ごうと決めたのだ
白黒に歩くのは
目をつぶってからでいいですから
「赤と緑と補色関係
 みんな茶色に見えます
 雨が降ったらとけてしまいそうですね
 おきぬけに羽化する 蝉
 (自分が液体であったことを
わすれたみたいだ) 」
すべての底へ
泳ぐ
(ねばりついてくる泥)
より遠くで  溺れるために
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Posted on 05:36:16 «Edit»
2015
02/17
Tue
Category:【手習】

どこにも書いていないことを教えて(ゴル) 

どこにも書いていないことを教えて

お化けについて語る植物博士が「心霊写真におっぱいが写らないのがナゾ」って言い残して頓死。博士の育てたバラで満ち溢れたビニルハウスはその日から死に始めた。水遣りはさ、メモに書いてある通りにやればいいっていうけどさ、朝焼けや夕焼けのにおいなんて、メモには残せてなかったんだよね。

混沌とした古今東西が行われている。食べることの出来ない四足。机。自動車。バク。バク? 夢の欠片が口の端についている。今朝もまた何も覚えていない。夢の中で、小学校のときの友人と中学校のときの友人と高校のときの友人が大学の友人と一緒に大学院の講義を受けていた。講義をしていたのは会社の同僚だった。とても整然。

どこにも書いていないことを教えて、という娘を養分にしてわたしたちの大地を支える樹木が育ったのよね、え、ウソー、マジで超受けるんだけどー。じゃあ、根っこの埋まってるこの大地がその娘ってことじゃーん。講義室は騒然としている。不敬罪だ。指先から血が流れている。バラの枝を折る癖が治らない。血文字で机に「おっぱい」って書くなよ。

こ 2015/02/14 (Sat) 20:15:47
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Posted on 05:35:34 «Edit»
2015
02/17
Tue
Category:【手習】

美しいって何ですか?(ゴル) 

美しいって何ですか?

おお、素晴らしい
けふも朝が来て夜が更ける

ぼくは チクタクとうごく 
メトロノーム聴こうか
こんな世の中じゃ あるまいし


生きていくって何ですか?
死に向かうって意味ですか?


おお、花が咲き散り乱れる
給与明細とクレカの請求書が同時に手の上にある

美しいって何ですか?
シに向かうって意味ですか?

恥ずかしげも無く、また何か言ってる チクタク
ぼくは メトロノームを聴く


楽しそうって何ですか?
笑ってるって事ですか?


おお、毒を吐き皿まで食らう
にきびの跡の数だけ暗い青春だった

醜いって何ですか?
笑われるってことですか?

ブラインドタッチがウマクなって
ゲンジツにモーモクになってって

こんにちは、メトロノームです


夜になって朝になって



夜になって朝になって



夜になって朝になって


はやく朝になって、、、!


*「」で括られた文字列はメトロノーム「生きてるゴッコ」の歌詞からの引用

こ 2015/02/09 (Mon) 20:30:29
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Posted on 05:34:38 «Edit»
2015
02/17
Tue
Category:【手習】

うまれかわ(ゴル) 

うまれかわ

このかわをわたってはいけません、という看板を無視して、むしたちは川を渡り、渡りそこね、幾千幾万ものむしたちの足が浮いている、かわ、川一面にはむしたちの羽、上皮、珍しい皮をひろうと幸せになれるという伝説がある、虹色に輝くその皮を稀皮(まれかわ)と言い、2月から3月にかけて多くの観光客でにぎわう一方、マナーのなっていない心ないひとたちのせいで、あんなに美しかった自然は荒み、川はよどみ、むしたちは死に絶え、観光客は足を運ばなくなったことで、川は生まれ変わったのだ、そうだ、かわは、うまれかわ---

こ 2015/02/05 (Thu) 20:52:19
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Posted on 05:33:42 «Edit»
2015
02/17
Tue
Category:【手習】

よこしまなきみとさかしまなぼく(ゴル) 

よこしまなきみとさかしまなぼく

たてじまなとらとうらしまなたろうが
カニのたべかたについて
あさってのほうこうからんぼる
炭酸水の落花生に
いい日向ぼっこがありますよ いい日向ぼっこがありますよ
と、バニーガールの二等辺三角形が
缶ビールの泡のなかにたくせ
聞こえるか 黄河の流れが

よこしまなきみとさかしまなぼくが
裏運動場で投げあったボールの放物戦線上に
たたずんでいる溢れかえる子供
歩道にはチョウチンアンコウが規制している微生物の発光と
DVDより高画質の名詞を与えてくれます
叫んでいる フライドポテトとねじれの位置にあるのです
主よ、我々はどこへゆくのですか?(光指すほうへ

ちちじまでうまれははじまでそだち
波の音は彩雲を呼び起こし出立をよろこんでくれるでしょう
正露丸の温度はじょうずにはかれましたか?
古新聞紙につつんだメスシリンダーに怒りを注ぎいれたこと
を、思い出したり 忘れていたり
カーテンの隙間から人の手の形をした影が見えています
ぼくです きみです
こ 2015/01/29 (Thu) 23:09:29
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Posted on 05:32:46 «Edit»
2015
02/17
Tue
Category:【手習】

千年樹(ゴル) 

千年樹

そいつは 長いあいだ つったって
この町を いつも 見下ろしているって
言ってんだ よぼよぼの じーさんが
ミサンガ 夢つかみそこなった右手のばして
「ここでキスして」 ばーさんは まだ葉っぱ
青々とした頃 戦争に行く じーさんに 花
送ったって言ったっけ いつだっけ
滑稽 うこっけい 卵は貴重品だった 千年
たっても待ってます 

じーさん いつも ひとりぼっち
こっち見て にかって笑うんで ぼくらも
にかにかって 笑い返すんですガードレール
隔てた車道 影 爆弾のあとみたいに
期待に こたえてみたのにさ ねえ
ミサンガの 花は咲くかい 願い事描いたこと
いちどもないさ 牛乳瓶にささるタンポポ
叶うなら もどしておくれよ 千年前に
こ 2015/01/22 (Thu) 20:18:41
tb: (0)    com: (0)
Posted on 21:34:08 «Edit»
2015
01/16
Fri
せわしなく掻き出す前足が穴をどんどん深くしていく、おれはモグラ一家の長男として生まれて、ゆくゆくはこの一家を養っていくことになる、親父は盲目でおふくろは乳がん、肥大した乳首にはおれの弟たち妹たちが葬式の坊さんのつける数珠みたいにつらなっていて、親父がそいつらの頭を白い杖でぽかぽか叩いている様はまさに糞坊主だ。糞。姉貴はヤマアラシのところへ嫁に行き、姉貴の上にいた幻の長男、おふくろの初産は死産で、親父はショックのあまり両の目をつぶしちまって今じゃただの穀潰しだ、姉貴も嫁ぎ先でDVよろしく、あのちくちくする針で両目をつぶされて逃げるに逃げられないらしい、おれたち家族を死んだ兄貴が見ている。一度も会ったことのない兄が。せわしなくおれの前足が掻き出す先に気配を感じる。いえい。ビンゴ。ミミズたちが空飛ぶスパゲッティ・モンスター教を思わせる群集で、目の見えないあいつらは思いつく限りの神の名をつぶやいているが、てめえの口とケツの穴の区別もつかない連中ときたもんだ、屁の音で神の名をこきやがる。そんなあいつらの断末魔を聞く義理もないおふくろがミミズをついばみ、目の見えない親父もついばみ、弟たちと妹たちは乳がんのおふくろの乳首から分泌するなんかよくわからん液体を飲んでいることだろう、おれはそれらを見ない。おれは前を向いて穴をどんどん深くしていく。おれは兄の視線を追いかけたい。幽霊の兄は何もかも見透かしている。おれが本当は逃げだしたいということも、こんな糞みたいな状況に甘んじるしかない弱いやつだってことも。糞が。一度も生きたことがない兄になにがわかんだよ。おれはおれの前足をせわしなくせわしなく前足が掻き出す穴に前足をつっこみどんどんどんどんおれは深くしていく深みにはまっていくもうなにも見えないはじめからなにも見えてなんかいなかったんだ。知ってた。糞。
こ 2015/01/16 (Fri) 19:41:00 New
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Posted on 21:32:51 «Edit»
2015
01/16
Fri
Category:【手習】

sweet noise(ゴル) 

ノイジーキャット
甘いごみ
本棚のうえ
鎮座ましまし

スイートノイズ
渋谷の雑踏
6000本の足足足
交差点 打倒
ゆらせゆゆらせせ

キャット・ザ・スイーツ
さまよう視線
中空でとらまえろ
幽霊 知り合いだきっと
今夜も窓がきしむ
こ 2015/01/11 (Sun) 10:31:17
tb: (0)    com: (0)
Posted on 21:32:11 «Edit»
2015
01/16
Fri
Category:【手習】

アスペクト盲(ゴル) 

「これは林檎です
と いって
おとこだとおもってるひとたちは 葡萄を かかげた

「これは蜜柑です
と いって
おんなだとおもってるひとたちは 林檎を かかげた

「これは葡萄です
と いって
おとこでもおんなでもあったりなかったりするひとたちは 蜜柑を かかげた

そうして みんなして
逆立ちしている

「これは地球です
「これは地球です

ここはM78星雲 
ひかりのくに

あんなところには3分といたくなかった
こ 2015/01/06 (Tue) 09:58:37
tb: (0)    com: (0)
Posted on 21:31:33 «Edit»
2015
01/16
Fri
Category:【手習】

初空のゆめ(ゴル) 

おいそれと流されねえようにおれは川に落ちた帽子を拾おうとしただけなんだぜここだけの話マジで、で、だ。仰いだところで糞忌々しいお天道様がいい気分を夢見させてくれるんだけどよ、こちとらこの川辺があたしの夢だってことに気付いているわけでいい加減うんざりしてゲボ吐きそうなわけわかる?わかんね?じゃあ地べたに吐かれたゲボにまみれて口つぐんでな。と、そんなことをくっちゃべっていたら帽子は川下へどんぶらこどんぶらこなわけでおまえとあたしの二人が木の棒持って間抜け面さらしているだけの風景、川原では石ころでつみき遊びしてるがきどもに燦燦と太陽が光をぶつまけていて、しあわせビーム!いえーい!おまえも一緒になってスペシウム光線の手の形していてなんだかなにもかもどうでもよくなったの。で、土手に土筆とか生えていないか探しつつお昼寝をしようとおもう。本当はまぶしいから目隠しのための帽子が欲しかったんだけどね。薄目を開けて見るとピーカンの空に羊雲ひとつ。
こ 2015/01/03 (Sat) 15:32:23
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Posted on 21:30:33 «Edit»
2015
01/16
Fri
Category:【手習】

プレゼント(ゴル) 


リン体プリン体ってうるさいわねこんな日にビールくらいがぶ飲みしたっ
ていいじゃない別に化粧がくずれてもいいじゃない知ったこっちゃないわ
よあー下ろしたてのストッキングに伝線はいってるじゃんほんともう信じ
られないうるさいうるさいテ
            レビうるさいなと思っていたテレビには恋人は
三択ロースクイズ~こちらの三択から正解をお選びくださった視聴者の皆
様に漏れなく牛ロースがあたりまぁ~す発泡酒飲んでる家庭ではめったに
食べられない高級品でぇ~すそうですよね牛肉には矢張り赤ワインですよ
ね赤ワイン意外とおいしいおがサイ
               ゼリアのデカンタがバカにできねーんだ
よマジでおれなんかドリンクバーだけで6時間いすわってたからねマジで
なにしてたかって?そんなもんべんきょーよべんきょーおれさまニホンゴ
スコシなのでニポンゴのおべんきょしたのよそんでもってしゅーしょく先
も決まったぜマジマジガチでマジで決まったんだよどこにって?そんなも
んイ
 ンドに行くって彼はあたしを置いていったわけよこれがビールを飲まず
にいられるかってんだくそーくそーストッキングを丸めてゴミ箱に捨てた
けどもったいないから拾っちゃったよロングスカートやデニムはくときに
インナーではけるからなってんだよちくしょーインドってなんだよガネー
シャみたいに頭すげかえてやりてえよちくしょービール飽きたよー赤ワイ
ンのみたいよーチーズ食べたいよーカッ
                 トアンドコピーカットオアコピーデ
リートおれはインドでたどたどしい英語を使いながらシステムエンジニア
をやっているここでは日本語なんてなんの意味もないなかったありえなか
ったんだおれはおれの国語と彼女を捨てて香辛料くさいこの地でヨーロッ
パからの電話を現地のコールセンターにつなぐシステムのメンテナンスを
しているあいつらは時間を守らないし給料は払わないしおまけに不潔だが
おれもおれのにほいがもうわからなくなってしまったただこうやっておれ
のメンテしたシステムで誰かと誰かがつながって会話を交わすってなんか
おれってすげーじゅーよーなしごとしてんじゃね?ってんなわけねーだろ
こ 2014/12/25 (Thu) 20:20:00
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Posted on 23:17:16 «Edit»
2014
12/22
Mon
Category:【手習】

それだけでうれしい(ゴル) 

かなしみシンクタンクはかなしみを集めている
-電車で靴をふまれた
-食べたかったドーナツが売り切れていた
-出した手紙が送り返された
かなしみシンクタンクはかなしみを集め
たくさんのたいやきに作り変える
-あんこ(つぶあん
-あんこ(こしあん
-お好み焼き
踏まれた靴は元に戻らないし
たいやきでなくてドーナツが本当は食べたかったし
住所を知らせてくれなかった友人とはもう連絡がとれないんだけど
かなしみシンクタンクのたいやきはおいしい
それだけでうれしい
こ 2014/12/22 (Mon) 20:30:09 New
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Posted on 23:16:40 «Edit»
2014
12/22
Mon
Category:【手習】

ひきだしあいた(ゴル) 

ひきだしあいた

あいたはこけた

こけたらむけた

むけてはないた

ないたあかおに

おにぎりたべた

べたべたべっとり

とりまでとんだ

とんでけふうせん

せんせんきょうきょう

きょうみるゆめは

どこにあるかな

ひきだしあけて

あしたになあれ
こ 2014/12/19 (Fri) 17:40:49
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Posted on 23:15:54 «Edit»
2014
12/22
Mon
Category:【手習】

少年よ我に帰れ(ゴル) 


ごめんなさい
すべて食べてしまったじゃがりこすべて
鼻から戻せますが戻しましょうか?
算数の授業つづけますか?
ぼくのノートはどうですかごめんなさい
ごめん、じゃがいもはそんな(好きじゃない
たぶん今年の冬は寒いの
先生そんな目で国語の時間ですか?
トメハネハライは必要ですか?
物理の時間に打撃ですかごめんなさい
後ろの席でくしゃみする
高梨さんの髪の毛を鋏で切ってしまいました口に
入れたりしてません入れたのは
高足さんの足の裏をお湯につけてふやかした
足の裏の皮をはがしたものだけですごめんなさい
じゃがりこたべますか?
高足さんの足の裏はどうですか?
どうしましたか?
授業はもう終わりですか?
ぼくが何かしましたか?
高足さんなんでそんな目で見るですか?
せんせぼくの鼻から
高梨さんの髪の毛
ノートに貼り付けてましたぼくの鼻くそで
ぼく?
ごめんなさいぼくっ
ってなんですかだれですかどこにいまふか?
とんとんとん(だれかいまふか?
こ 2014/12/13 (Sat) 22:10:21
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Posted on 23:15:00 «Edit»
2014
12/22
Mon
Category:【手習】

ひつじのひるね(ゴル) 

ラムチョップたべようラムチョップ
わたあめみたいな毛のかたまり
ひつじがひるねをしている
たんぽぽのわたげ
風が吹く 丘

斜面を駆け下りて台所に火をつけよう
溢れる肉汁にアプリコットジャムを落としてソースにする
あまぐもみたいな毛
ひるねをしているひつじ
階下にある歩行器
煙突からたちのぼる夕餉の知らせ

夢の中ではいつでも満腹だった
黒い髪のひとたちが連れて行かれる
あの人たちのしゃべっている言葉が聞き取れない
おなかすいた
浮き出た肋骨と膨らむ下腹
寒さをしのぐ羊の毛
こ 2014/12/07 (Sun) 00:15:06
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Posted on 19:31:09 «Edit»
2014
12/04
Thu
Category:【手習】

重星のこすれる音(ゴル) 


「重星ってのは二種類あるんだ」

たま、は、
吸って、いた、
煙草、の。
灰、を、
噴水に落とし、ながら、
いった。12月、
公園、の大雨、で、
残った、
枯葉、すべて、
地、面、
集めて、
いた。

「実際にふたつの星が近くにあるときと、地球から見てふたつの星が近くにあるように見えるとき、だ」

大風、が、
隣、町から、
木、の葉、
連れて、きて、
たま、と、ぼく、が、
(この公園に)
紛れ、
こすれ、
る、かもしれない転校
転、校、
、転校こうやって、
ぼく、(ら、
しゃべっ、てい(る?
ネトゲの公、園、
夜は更ける

「実感とは別にさ、誰かの目から見て、そんな風に判断されてしまうんだよ」「ごめwwwおれオチるわwwwwwおやすーwwwww」
こ 2014/12/03 (Wed) 20:31:36 New
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Posted on 19:30:25 «Edit»
2014
12/04
Thu
Category:【手習】

今夜は何を召し上がりたい?(ゴル) 


とうふ を たべたい
つぶした とうふ を たまご と まぜて
オムレツ に しよう !

満月までこのはしごでとどくかな?

おきゃくさん おなか すいてる みたい だね
ぼくが おつきさま の オムレツ を つくって あげるよ

そいつはいいや、是非つくってくれたまえ
わたしのはしごでは届きそうもないんだ

***

あの日の晩以降、わたしたちの住む町の夜はまっくらやみさ
でもさ、それでも あの極上のオムレツを食わせてくれたやつは
今夜もたずねているんだろうよ
こ 2014/11/30 (Sun) 09:54:16
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Posted on 19:37:51 «Edit»
2014
11/24
Mon
Category:【手習】

口をぽかんと開けて(ゴル) 

へっくち
と くしゃみして
とびだした まえばが
ファミレスの
むかいの
せきに
すわっている

「なにアホみたいに口あけてんのさ」

まえばは
スカートが
めくれないように
きをつけながら
あしをくみ
いった

ぽかん と くち を あけている

ぼくのとなりには
いつも
ぽかんがいた

「あんたたちのせいでわたしもいつまでたっても大人になれない」

煙草に火をつけて前歯がいった
ぼくは店員の目を気にした
彼女はまだ乳歯なのだ

ぽかんが
用もないのに
店員を呼ぶボタンを押して
灰皿をたのんだ

ぼくはあいたくちがふさがらなかった
こ 2014/11/22 (Sat) 19:31:03
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Posted on 19:36:38 «Edit»
2014
11/24
Mon
Category:【手習】

海と星(ゴル) 

海と星
無限に翻るカーテンの隙間から息子が蟹を見つけた。太平洋が海底から3cm浮かび始めた年に息子は生まれた。息子は来月、4歳になる。小指だけ折り曲げて自分の年齢を教えてくれる。息子に見つかった蟹は右腕が折れていた。折れた右腕は近くにあった。息子が手を伸ばすと、右腕を失った蟹は、じゃじゃじゃと音を立てて砂のなかに潜っていった。もうすっかり海底からは太平洋が蒸発しきっており、蟹は、砂漠に住む蜘蛛のように伸ばした体毛に生じる水滴で体の湿り気を保っている。残された蟹の右腕がかすかに動いている。プールの授業中、水底に潜って見上げた太陽の歪んだ光は真昼の星を思わせる美しさだった。太陽の光で見えなくなる星とは異なり、太陽の光とは異なる光を発する星があったら昼間にも星が見えるのではないかと思っていた。そんな光が乾いた海底に降り注いでいる。太平洋は毎月3cmずつ浮かび上がっていった。頭上で寄せては返す波が、歪んだ光の影を作っている。若いカップルが息子に話しかけている。スカートの襞に二人の淫靡な雰囲気がはさまっているように感じて不快に成った。年齢を訊ねられた息子は小指を折り曲げた右手を見せた。髪の毛の短いほうが息子と話しているあいだに、もうひとりが煙草を吸っていた。ふと目を離した隙に息子の泣き声が聞こえた。ふたりの姿は見えず、息子の小指には歪んだ火傷が残されていた。

こ 2014/11/19 (Wed) 21:30:58
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Posted on 20:44:11 «Edit»
2014
11/08
Sat
Category:【手習】

「穴」(ゴル) 

町に電波塔が建って人々は新聞を捨て携帯電話を手に入れた家庭用の電話機を置いていた場所にはいまではぽっかり穴があいてしまい第3火曜日のちり紙交換の日には毎朝の新聞紙に代わって郵便受けに届くようになった穴を町民は出すようになった電波はどこからもどこまでも世界中へつなげてくれるのでおじいちゃんは詰将棋の答えをググりおばあちゃんはクックパッドを開いたので詰将棋の出題者は穴になり我が家に伝わる伝統の味も穴になってしまった学校では先生が教科書を開いて授業することもなくなり子供たちも開くべきノートが穴になってしまっていた携帯電話はこれまでのあらゆることを検索し表示してくれるのでどのテストもどのテストも全校そろって100点だったたから点数に意味なんてないさと穴になった携帯電話はスマートフォンにいつの間にか変わっていて画面上のアバターが持ち主の変わりに着替えをしたり食事をしたりしていた電波はどこまでもどこどこまでも飛んでいくこのぽっかりとあいた穴の町をグーグルアースで見て見るとちり紙が見える「」
tb: (0)    com: (0)
Posted on 20:39:12 «Edit»
こどくって言葉が羽を生やしてビルから飛び降りた
そいつは空中で手足が7本?8本?たくさんに分裂して
地面に激突するまでに
自分自身を食い尽くした
あとには「なにごともなかった」だけがそこにあった

なにごともなかったはいつも笑っている
霞ヶ関の数字の動きを日経新聞で追いかけている振り
その素振りだけでお金持ちになれる振りをしている
多くの人が泣いている
泣いている振りかもしれない
「ごめんね」が過去からおいかけてくる

ごめんねの六本の足を引き抜くと柿の種
ピーナッツバターを塗りたくった青春でサンドイッチをつくろう
重ねた月日からあまじょっぱい味が染みてくる
前歯にうまく力がはいらない
は、いらないんだ
こ 2014/11/05 (Wed) 21:43:34
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Posted on 12:47:49 «Edit»
2014
10/05
Sun
Category:【手習】

秋模様を切り取って(ゴル) 

秋球儀というものがある。地球儀や月球儀のような、それだ。ただ、卓上に置けるサイズのものもあれば、幼児が両手を広げても抱えきれないものもある地球儀などとは違い、秋球儀は手のひらサイズのものしかない。手のひらのサイズといっても、手のひらに収まるくらいのある一定のサイズ、というわけではない。手のひらの大きさが人によって異なっていることから、秋球儀の大きさも人によって異なっているのだ。もちろん、年齢によっても異なる。成長にともない、おれの秋球儀も大きくなっていった。

腕を失くしたのは二十歳になった日の翌日だった。なんてことはなかった。ただ、駅のホームで電車を待っていたときに、後ろの人にトンと押されて両腕をバランスをとるために前へ伸ばしたら、たまたま快速列車がおれの腕も運んでいってしまったってだけだ。結局おれが乗ろうとしていた駅から鈍行で3時間ほどかかる終点の駅まで連れて行かれたおれの腕は、お前がおれにくれた初めての誕生日プレゼントという形となった。病室でご対面。お前は着古した白衣のしわを丹念に指先で伸ばしていて、おれはそれを見ながら、ああおれはもうそういったことができないんだな、とあとになって思い出した。そのときはそんなヨユウはなかったようにおもう。お前は白衣を脱ぐとリハビリを終えたおれのために毎晩うちへきてくれるようになった。ボクサーパンツいちまいで林檎をよく剥いてくれた。フライパンを扱いよく火傷もしていた。キリギリスが鳴いていた。

両腕を失くした患者と、その関係を特別なものに変えたとき、ぼくはぼくの秋を彼に譲ってやってもよいとおもったんです。と、医者をやめようか迷っているあたしの相談に乗ってくれた旧友が、とつとつと話し出した。このヒトコトを引き出すためにビールを何杯飲ませたことだろう。秋が終われば冬になります。では、秋を失くしてしまったものは、秋を終わらせることができるのでしょうか。ゴツン、と旧友はジョッキをテーブルに置いた。これと同じのもういっぱい、とあたしは店員へ既に告げていた。彼は、ぼくの秋球儀を受け取ってくれませんでした。というのも、受け取るための手がなかったので。だから、ぼくは、ぼくの秋球儀をかつら剥きにして、彼の首にかけてやったんです。ビールおまちどーさまでーす。こちら空いたお皿おさげしまーす。他人の秋を身にまとって迎えた冬って、やっぱつめたいんですかね。やっぱぼくのせいなんですかね。あたしは何も言わない。医者をやめた今、空は秋模様であった。そんなことないし、傘もない。
こ 2014/09/30 (Tue) 20:09:16
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Posted on 19:12:43 «Edit»
2014
08/05
Tue
Category:【手習】

扇風機の口癖(ゴル 

扇風機の口癖
へい よー
汗をかく世界
ポテトチップス(のりしお)よりもしょっぱくなる顔面が
真っ暗な画面にうつるぜ

へい よー
顔を左右に振る世界
エアコン(送風)よりもいきほいのある風は
おまえんとこまで届いてないぜ

へい よー
昼間からビールを飲む世界
ウィークエンド(土曜日)が延々と続くぬるい蜂蜜みたいな悪夢が
おれを「弱」から「強」に働かせるぜ

へい よー
茹で立てのえだまめに振り掛ける粗塩にむけて

こ 2014/08/02 (Sat) 10:27:50
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Posted on 13:26:40 «Edit»
2014
02/10
Mon
Category:【手習】

[humanchildnight] 



[humanchildnight]






果てしなき思ひにふけり夢のごと今日もかくして日はくれにける
                          (西田幾多郎)

此の河は絶えず流れゆき
一つでも浮かべてはならない花などが在るだろうか
                    (椎名林檎「月に負け犬」)

火取虫羽音重きは落ちやすし
                           (加藤楸邨)


               ***


          錠剤の名前は月の光で照らされた「その花は」という傷、を買
     うための硬貨が手の中で踊っている

          踊っている人形のような文字で「その花は」と落書きされた教
     科書は机の上に無造作に置かれたまま、意味もなく設置された球状の地図
     上に〈ここ〉はない

          彼は/彼女は(何処か)置き忘れきてしまったものを思い出す
     ために凝視する、される月球儀は回転を早め、歯の間から零れ落ちた錠剤
     の破片より蛾の啼き声が逃避する

          逃げ遅れた喉は焼けてしまい、嗚咽を禁じられた唇は針金で封
     をされてしまった、教室の窓を開き、窓越しに仰いだ空に浮かんでいる新
     月は(何処か)

          行き場を失くした蛾の死体を埋めるために学校の花壇に、は月
     見草が咲き乱れており、「その花は」土に根を張っている、ので慎重に穴
     を掘ります

          クレーター、が教科書の持ち主のあだ名です、彼の/彼女の瘡
     蓋を揶揄する、踊るようにこびりついた汚物ごと教科書を燃やしてしまえ
     ば、羽をもがれた蛾のように

          彼が/彼女が啼く〈alittlesongthathasnobegining'n'ending〉
     が聞こえるよ、聞こえる回転数を増す月球儀に、針金で口付けを

          封された窪みを生み出した刃物で今度は「その花は」と傷をつ
     けようか、火をつけようか、足元の瘡蓋を踊るように蹴飛ばし、複数形で
     名前を呼ばれることを望むのだ

          生徒だった場所は踊りつかれた人形のようです、使い道のない
     喉に「その花は」を押し込んで、教室に新月を見つける

          見られた、破り捨てた教科書に残された落書きの読み方がわか
     らない、から〈始まりも終わりもない小さな歌〉ということにする、けれ
     ど本当は毎夜、満ち欠けするように流れているものなのだろう

          欠けてしまった月球儀を左手に、〈ここ〉を右手に穿つように
     突き立てた月見草、を歯で抜き生まれた空白を覗きこむのです、火事にな
     る直前の教室で彼が/彼女が笑っています

          出火原因は瘡蓋の盛られた机、机の持ち主ごと燃え、窓の外へ
     と投げ捨てられた、落ちてきた恵みを栄養にして月見草は咲き誇るのだろう

          首筋の割れた人形が花壇から発見された、検死の結果、全細胞
     に薬物反応、通称「その花は」の汚染が認められた、なお校舎全焼の火災
     との関わりについては現在捜索中とのこと

          (((焼け焦げた現場には月が落ちて来るんですってね、迷信
     の類だろ、今夜はいつもより影が濃く感じますね天気予報では新月が降っ
     て来るって言ってましたよ、あーあーカサ忘れちゃったなー))))))

          巷で話題になっている月色をした蛾の鱗粉を精製して固めた錠
     剤の表面には、複数形で名前を呼ばれるための方法が刻まれている、窪ん
     でいる部分は〈海〉と、彼の/彼女の机は底まで沈んでいく

          彼の/彼女の窓際で奇跡的に焼けずに残った手紙は強く刻みす
     ぎた〈ここ〉、焼き殺された落書きの内容が断片的に描かれて

 >
 >
 > Subject : Fwd:白日夢。 Date:Sat,09.Nov.2002.12:27:32:+0000
 >
 >夢じゃない - - - -
 >ふと頭に浮かんだ - - - - - -
 >- - - - ひとり
 >教室に居て
 >- - - - - の表面には、
 >-
 >  「yume no naka ni irukoto ni kizuite wa ikemasen」
 >- - - - 
 >- - - 不安になって
 >確かめるように - - - - 名前を
 >- - - に - - 送信して
 >返事が - - - - -
 >- - - は受信ボタン - - - -
 >- - が - -
 >
 > Returned mail:User unknown
 >
 >- - - - - - - - - - - - - - れたのに(!)
 >だれ - - - 届か - くて
 >- - 
 > R------- m---:U--- u------
 >- 
 >って - - - - のメ - ル - - - が - って来る
 >- - も - - - と - つながらない
 >
 >
 >
          月面上には無数の〈海〉があることが確認され、海底に設置さ
     れた校舎には近々放火予告がされる予定です

          ほら、月見草の首を一つずつ切り落としていく、もう机が(何
     処か)消えてしまうこともなくなった、最近欠席の多い教室は少し静かに
     なり、聞こえるね、よく聞こえる

          それぞれの机の上に設置された月球儀は一度も授業で使ったこ
     とがない、みんな戯れに「その花は」と落書きをしては、その続きを書け
     ないでいた

          啼いていた、教科書【P.73】を開いてください、生徒が必ず落
     書きをする月面上〈海〉の写真、教室は日に日に静かになって、もう〈こ
     こ〉には蛾もいないのだ

          〈ここ〉に「その花は」と刻んでしまったのは彼だろうか/彼
     女だろうか、犯してしまったことは月へと落ちてしまった、きっと穴があ
     くだろう、新しいクレーターで溺れよう

          燃えているのだ、啼き声は〈小さな歌〉を間違えずに繰り返し
     続け、焼き損ねた机の底へ落下する月の上、踊る生徒が覗き見えた

          急に耳を襲った通奏低音は一晩中続いた、予報では新月が落下
     したといっており、落下地点には大きなクレーターが出来てしまったとい
     う、中心には燃え盛る学校があるはずだ

          夜が明けなかったので生徒たちはまさに授業中、花壇には「そ
     の花は」以降記されていない教科書が大量に埋められていった、教科書の
     数だけ持ち主も沈んでいった

          落下させれば羽ばたくように蛾になり、鞄から教科書は消えう
     せた、学ぶことなど何もない、と窓から次々に飛び降りた、どっちが先に
     着地できるか競争だよ、と全校生徒が飛び降りた

          窓からは月球儀が逆さまに設置されていて、彼は/彼女は床へ
     向かって上昇していく体温を感じていた、炎に熱せられていく体温を

          落下物はどれも、複数形で名前を呼べ、呼んでくれ、と〈小さ
     な歌〉詞を熱烈に口ずさみ、誰もがそれを続きだと始まりも終わりもなく
     信じていた

          現場は騒然としており、巨大なクレーターは流星群が落ちたも
     のだった、白日の出来事とは信じられなかった、夢のようだった、カサは
     いらなかった、灰になった手紙は(何処か)

          ずっと新月だ、「その花は」と人々が握り締めていた硬貨に刻
     み瘡蓋のように剥がれてしまう、噛み砕いた月と〈歌〉の教科書はもう必
     要ない、お花畑にしよう、〈海〉を花壇にするべく体中は耕されてしまっ
     た

          穴だらけの月球儀を覗き込む、「その花は」飲み込まれようと
     している錠剤を飲み込んでしまう蛾は蜜を吸う、教室には甘いにおいが立
     ち込めている気がする、火の〈海〉だ

          教室の窓を開きもう一度夜空を見る、彼の/彼女の見てきた、
     見たことない月が落下する、落下する〈ここ〉と衝突し、ちょうど「その
     花は」に噛み砕かれ、肉を裂き肌を突き破り、複数形で咲き誇












 
                                                       れたのに(!)




























.
tb: (0)    com: (0)
Posted on 16:15:49 «Edit»
2013
02/21
Thu
Category:【手習】

鯖、あるいはキリンの檻 

バジルは、


(近くの海岸を散歩する。朝方の散歩はとても寒くて、誰もが長い首を大事そ
 うに縮めていた。なじみの漁師から鯖をゆずられた。こいつをオーブンで焼
 くとすげぇうめぇんだ、が漁師の口癖だ。彼は欠けた前歯を見せて笑いなが
 ら去ってった。向こうのほうでビッグイシューと叫ぶスタチューが見えた。
 ビッグイシュー、と半音外してうたったきみ。焼き上がりを告げるオーブン
 のメロディを真似て。わたしたちは足並みをそろえて散歩した。音が合って
 いないことなど、たいした問題ではなかったのだ。)


バジルは、
にぎりしめられたあと、
時計みたいにとろけるチーズの
うえで優雅に、


(入園券をにぎりしめた女の子に鯖のお礼をいう。いいのよ、と皺くちゃにな
 った緑色のチケットをわたしに寄越す。優雅だ。女の子の汗ばんだ手のうえ
 に半券をのせる。走り去る女の子の背中に声をかける。今度はいつごろ帰っ
 てくるんだい。女の子は2つに束ねた髪の房を揺らしながら振り返る。いま
 咽喉のあたりにいるみたい、あそこは鯖がよく獲れるんだって。そういって
 キリンの顎から少し、したの辺りの斑を指さした。もうすぐ帰ってくるよ。
 わたしがうなずくと、きみの、あの時の笑顔を見せてキリンの檻まで女の子
 は駆けていった。エキスをたっぷり吸ったカリカリのパン粉とチーズをのせ
 た鯖の一切れを口にしたときの顔を。)


優雅に踊るバジルが、
オーブンのなかでおとなしくなり、
もれてくる、
蒸気となった脂の匂いは、


(これは漁師からきいた話。例のオーブン焼きを挟んで2人で赤ワインを何本
 も空けていた晩にきいた話だ。きみがいなくなったあとの話だ。

 (娘の前歯がグラグラしてたころ、「あたし、きういになりたい」とつぶやいた。
  なれるわぇねぇだろ、っつったら、何日も何日も、海岸で丸くなっていた。丸
  くなって丸くなったまま眠っちまい、気が付いたらきういになってると夢でも
  見てんのか、そのうち、きういころがし蟹にころがされたんだ。)

 漁師は赤ら顔を近づけてきた。

 (きういころがし蟹って知ってっか? あんたんとこの動物園からも、よくきう
  いがころがってんだろ。きういたちは海岸で迷子になると、心細くなってまる
  くなっちまう。きういころがし蟹は、はさみで傷つけないようにきういをころ
  がす。あいつらは器用な蟹だ。きういが迷子になった晩、園の職員が総出でさ
  がしてもみつかんねぇだろ? けれど、よく朝には、すやすや丸くなって眠っ
  ているきういが帰ってきてっだろ? 娘もそうやってころがされたらしい。あ
  いつらがどこから来たか、漁師仲間の誰も知らねぇ。きういころがし蟹が、や
  し蟹の仲間ってのは知ってる。だから、水が苦手なんだ。浜辺と動物園のあい
  だに役所がこしらえた防潮林にすんでる。朝の散歩をしていると、波打ち際で
  おぼれて死んだきういころがし蟹を見たことがあるだろ? 水辺はあいつらに
  は危険なんだ。なのに、迷子になったきういをころころころころころがすんだ。)

 椅子に背を預け、漁師は続けた。

 (きういころがし蟹は、帰るべきものを帰るべき場所へころがす。あいつらの一
  匹を船に乗せると、漁がうまくいく言い伝えがある。喰われるべき魚だけをつ
  れてきてくれる。だからおれたちは獲り過ぎたりしねぇ。でも二匹以上は駄目
  だ。凪いじまって船がうごかなくなるからな。)

 グラスを干して、もう一杯、漁師はワインを注ぎ、こう付け加えた。

 (うちの娘の、帰るべき場所はどこだったんだろうな。おれんとこには来なかっ
  た。当たり前だ。俺は海のうえにいたんだ。娘も教えてくれねぇ。)


きみと食べた、
鯖の旨みを、
おもひださせる。


(その日の翌日、キリンの檻の前で丸まった漁師の娘を見つけたのはわたしだ
 った。女の子は目を覚ますとすぐに、抜けたばかりの前歯をキリンに向かっ
 て投げつけた。わたしが止める間もないほどの素早さで。前歯の描く放物線
 は、それは見事で、キリンの首の根元の斑にぶつかった。お父さんにあげた
 の。わたしの目を見ていった。なるほど、とわたしはおもった。)
















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Posted on 19:31:47 «Edit»
2012
12/09
Sun
Category:【手習】

ぼくらの共和国(ゴル) 

■613 / 1階層)  ぼくらの共和国
□投稿者/ case -(2012/11/27(Tue) 03:27:35)
1.ぼくらは髪の毛を集めて人形にした

ぼくらは椅子の上を徘徊する者
たまたま出会った侍は床屋を営んでいた
教室の隅にはネズミが死んでいる
ぼくらがつくったのは藁人形だった
ぼくらをつくったのは


2.クラスのみんなは人形をつくるのに3ヶ月かかった

呪いの手順は簡単だった
教室に鍵をかけて最後まで立っていたやつの生き血で手紙を書けばよかった
侍は早々に切腹した
勤勉だった侍はクラスのみんなの人形をつくり終えていたので
教室はみんなのはらわたが散らばり宝石のようだった


3.夏休みにはみんな幽霊になっていた

ぼくらの国の国民としてぼくらはクラスメイトを受け入れた
幽霊となった彼等の供する税金はポテトチップスだった
ぼくらはそれらを頼りに篭城していた
警察はいつだって発砲する構えだったし、マスコミはみんな笑顔だった
国民たちもまた楽しげに、悲しそうなふりをしていた


4.ぼくらの国に王様はいらなかった

テレビ局の人が名刺を片手にぼくらの教室にやってきた
校長を仲介に僕らの国にやってきて、
自分たちの局のカメラだけ教室にいれた
ぼくたちは名刺がパスポートでないことをしらなかった
次々と国民は成仏していった
カメラの前で、むかし好きだった女の子がピースサインしている
テレビ局の人がにやにやしながらその子を撮っている


5.人形たちの放つレーザービームに教室は燃え尽きた

ぼくらは侍の幽霊にテレビ局の人を殺させた
この人たちの髪の毛で新たな人形ができた
ぼくらの国は共和国となり、様々なポテトチップスが人工音声で話しかける
「さーてぃんむらっと」「さーてぃんむらっと」
ポテチの響きに呼応して新しい人形がビームを放ちだす
黒板は石鹸のようにとけた
石鹸のようにとけたのは黒板だけじゃなかった


6.様々な深海魚たちが空気の底を泳いでいる

ぼくらの共和国は公共的な水源で鎮圧された
人形はすべて燃え尽きた
クラスメイトはみんな成仏した
ぼくらはまだ怨霊になるだろうし、いつか写真に写ってやりたい
ピース
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Posted on 15:27:24 «Edit»
2012
11/23
Fri
Category:【手習】

個と場(ゴル) 

■518 / 1階層)  個と場
□投稿者/ case -(2012/11/13(Tue) 22:18:07)
卒業してたったあいつは、
お前にとってのロケットで、
おれたちは当然のように受験生の振りをする蛹になって、

そいつがなんだっていうのさ
(牛乳を拭いた雑巾はいつまでたっても白い水を絞らせる

あいつは今では
お前のカタツムリ・キャタピラで、
おれたちは赤本を枕に土手で寝転んだりするような青春を殺して、

紫色の蜘蛛が流れて、

お前のなかであいつは
ティッシュ・イン・ザ・パフェよろしくご機嫌で、
お前のセーラー服をおれの場所に定位させたいのに、

ジッパーは間抜けなおれを笑うかのようにお前の指に噛み付き、

いつのまにか逆剥けた指
と指が入れ替わるように
お前とおれは別々の大学
に行くもう二度と会わな
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